私は名古屋出身であり、中央線といえば、中央西線を真っ先に連想する。幼い頃、育った家の近くを中央本線が走っていたが、半世紀近い前はほとんどの列車が蒸気機関車D51牽引であった。したがって私の思い出の中央線は電車ではなく、汽車の走るイメージなのだ。今や名古屋発の特急「しなの」は、急カーブを快適に走り抜ける新鋭の振り子型電車である。名古屋市内を反時計回りに半周して、市内東部の乗客を最初の停車駅千種で拾って、掘割の中を進む。このあたりは私の幼少の頃は単線で地上を走っていた。親に于を引かれ、踏切でD51の蒸気を全身に浴びて喜んでいたらしい。そんな幼児体験が私を鉄道ファンに育て上げたことは間違いない。しかし、もう当時の面影はどこにもない。最高時速一三〇キロの特急電車は、あっけなく掘割から高架に抜け出て大曽根を通過する。左に見える名鉄瀬戸線の高架駅。昔は地上を旧型の古びた電車がゴトゴト走っていたが大変身を遂げている。車窓反対側の右手にある母校の先には、中日ドラゴンズの新本拠地ナゴヤドームもあるはずだ。